概要
南平岸地区は、札幌市営地下鉄南北線 南平岸駅を中心とした地域で、区域内には平岸街道、天神山、平岸霊園、平岸プール、豊平区役所、南平岸まちづくりセンターなどが所在しています。
平岸という地名は、アイヌ語の「ピラ・ケシ・イ」(崖の・尻の・ところ)から名付けられました。
平岸地区は、明治4年(1871年)に岩手県から65戸203人が入植し、開拓が始まりました。開拓当時は、製網の原料である麻の栽培が盛んだったため、「麻畑」とも呼ばれていました。
明治23(1890)年に現在の平岸小学校の前身である平岸村第二類尋常小学校が開校しました。明治44(1911)年に完成した平岸と月寒を結んだ「アンパン道路」の起点はこの小学校となっています。南平岸地区は、明治以降、平岸通に開削した用水堀を中心に、果樹園や水田で村が形成されました。平岸でリンゴの栽培が始まると、リンゴ園が広まり、一時は海外まで輸出されるほどのリンゴの一大産地となりました。
昭和30 年代以降は宅地化が進み、平岸通の用水堀は埋め立てられ、現在は、商業施設が立ち並ぶ、主要な幹線道路となっています。平岸通から白石藻岩通に入った高台には昭和15(1940)年に完成した平岸霊園があり、お盆やお彼岸を中心に多くの人々が墓参に訪れます。霊園の隣にはかつて火葬場がありましたが、昭和59(1984)年に里塚斎場に業務を引き継ぎ役目を終えました。跡地には、平成元(1989)年に平岸プールが造られ、市内で唯一の50 m長水路コースを完備した温水プールとなっており、数多くの全国大会や国際大会が開催されています。
昭和46(1971)年に、地下鉄南北線が開業。開業当時、今の南平岸駅は平岸霊園が近かったことから「霊園前」という駅名でしたが、平成6(1994)年に「南平岸」に改称され、「南平岸」の名がより広く知れ渡ることとなりました。地下鉄は、南平岸駅手前で高架となっており、地上を走る地下鉄のシェルターは、南平岸の風景のアクセントになっています。
標高89mの天神山は、住宅地に囲まれながらも、四季折々の表情が楽しめる自然豊かな緑地が形成され、住民の憩いの場所となっています。かつてはこの天神山から一面のリンゴ園を見渡すことができました。西端には丘陵を利用して築いたチャシ(アイヌの砦) 跡も発見されており、また斜面前面からは、縄文中期の土器や石器も数多く発見されています。他にも、北海道最古の藤と言われる樹齢200 年を超えた天神藤、相馬神社、平岸天満宮・大平山三好神社、石川啄木の歌が刻まれている平岸林檎園記念歌碑、札幌生まれの劇作家・小説家の久保栄文学碑、本願寺道路終点を記した石碑、世界中からのアーティストが滞在しながら作品づくりなどができる天神山アートスタジオなどがあり、見どころがいっぱいです。
昭和43(1968)年には北海道テレビ放送(HTB)が開局。隣接する平岸高台公園は、同局の人気番組のロケ地としても全国的に知られています。HTB の社屋は平成30(2018)年に中央区へ移転してしまいましたが、令和3(2021)年には、平岸高台公園の園名碑がHTB から寄贈され、いまなお番組ファンの聖地として南平岸地区の名所となっています。
平成2(1990)年、地域の急速な発展に対応するため、平岸地区町内会連合会にて、南平岸地区の分割決議が行われ、平成5(1993)年に、南平岸町内会連合会が参加28 町内会で発足しました。令和5(2023)年現在、町内会連合会では、単位町内会間の経験交流や情報交換に力を入れ、特色ある事業を展開しています。
(札幌市豊平区発行「豊平区の歴史 ~THE HISTORY of TOYOHIRA WARD~」より一部抜粋)